人は希少なもの、限定されたものに対して、
非常に強い反応を示します。

つまり、「人は希少(レア)なものほど強く欲しがる」ということです。

今回はその希少性の持つ力についてです。

「期間限定」「数量限定」に弱い私たち

希少性の持つ力は、ビジネスのあらゆる場面で利用されています。

「あと1台しかありません」とか、「今日限りで販売停止です」という触れ込みを、いろんなところで見かけますよね。

そして、私たちはその触れ込みに、いつもとても強く反応してしまいます。

「この機会を逃したら、もう二度と手に入らないかもしれない」

そんな悲観的予測が、買い手の購買欲に火をつけます。

そして、「希少である、手に入りにくい」という理由だけで、その商品が欲しくてたまらなくなり、ついには購入に至ります。

しかし、いざ買って家に帰って冷静になると、

「なんで買っちゃったんだろう?」

と首をかしげてしまうのです。

このような経験は、誰でも1度くらいはあるのではないでしょうか。

私たちは、「希少性」というものを突きつけられたら、その瞬間に理性が吹っ飛んでしまうようです。

その商品が本当に良いものか、本当に必要なものか、本当にお買い得なものか。

普段はそういった「自分にとってのその商品の価値」を冷静に判断した上で買います。

私たちは理性的な購買者のはずです。

それが、「1台しかない」「今日でおしまい」と言われた途端に、魔法にかかってしまう。

そして、本当は必要のないものを、ものすごく買いたくなって、実際買ってしまう。

この心理は、何が原因になっているのでしょうか。

なぜ私たちは希少なものに弱いのか?

考えられる原因は2つあります。

  1. 希少なものは本当に価値がある
  2. 心理的リアクタンス

それぞれ見ていきましょう。

1.希少なものは本当に価値がある

1つは、希少なものは本当に価値がある場合が多い、ということです。

普通、あるものが希少であるということは、それが多くの人たちに求められているからです。

金や銀や宝石が高価なのは、それが希少だからです。

希少というのは、単に量が少ない、ということではありません。「求められている量に対して」少ない、ということです。

今、パソコンやスマホなど、精密機械の材料に使われる希少な金属「レアアース」が非常に高価です。

しかし、このレアアースは、200年前には、ほとんど市場価値を持ちませんでした。

レアアースの埋蔵量は200年前だって、とても少なかったはずです。

しかし、200年前には使い道がなかったから、誰も欲しがらなかった。

だから、市場価値もなかったわけです。

この理屈は、店頭で「1台しかありません」「今日で販売停止」と言われるような商品にもあてはまります。

生産量が少ないからではなく、「多くの人に求められているから」手に入りにくい。

私たちはそう判断するからこそ、たとえ本当はそんなに欲しかったものではなかったとしても、

この商品は多くの人に求められている。だから希少になっているのだ。
   ↓
ということは、私には最初価値が分からなかったが、実はとても良い商品なのに違いない。

と無意識に推論してしまうわけです。

ここで困るのは、

「本当に私はこれが必要なのか、値段は妥当か」

といった視点がごっそり抜け落ちてしまうことです。

そういった理性的な判断力は、今目の前に突きつけられている状況の前に、完全に無力化してしまうわけです。

家電量販店でこんな経験はないでしょうか。

この商品は品質も良くて、お買い得だ、欲しい。でもあと1台らしい。よし買おう。

店員を呼びつけますが、

「すみません、先ほど売約済みになってしまいました」

と言われます。

あなたはあきらめきれず、店員に在庫がないか尋ねます。

「在庫を確認してきますけど、あった場合は、必ず買っていただくことが前提になります」

と言われます。

あなたは欲しくてたまらなかったので、了承します。

在庫をチェックする店員。戻ってくると、在庫はあるとのこと。

一度「買う」とコミットし、店員の手もわずらわせた手前、今さら断ることもできなくなったあなたは、その商品を買うことになります。

ここで、この量販店は、在庫があるのに「1台限り」とか「売約済み」とか言っているわけです。

「希少性」をアピールすれば、買い手の購買意欲がものすごく高くなることを知っているからです。

また、事前に買う約束を取り付けるのは、一貫性の原理の「コミットメント」を利用しています。

一貫性の原理とは?

このように、ちょっとした場面でも、
心理学の法則は縦横に駆使されています。

私たちの頭には、

「希少なもの=多くの人に求められている=価値が高い」

という方程式が刷り込まれています。

確かにこの方程式は、正しい場合が多いです。

しかしそれを利用して、たいして売れてもいない商品を「在庫わずか」と称して、さも価値が高いかのように見せかける売り方が横行しているので、注意が必要です。

2.心理的リアクタンス

希少性がアピールする2つ目の理由は、「心理的リアクタンス」と呼ばれるものです。

これは、簡単に言うと、「禁止されると、破りたくなってしまう」という心理です。

リアクタンスは、「抵抗、反抗」という意味です。

文学作品でよくお目にかかるテーマですよね。

「ロミオとジュリエット」では、ものすごく仲の悪いモンタギュー家とキャピュレット家が、2人の仲を引き裂こうとします。

しかし、両家が妨害すればするほど、2人の恋は燃え上がります。

あまりにも燃え上がりすぎたため、2人は「永遠の愛」を手に入れたいと欲するまでになります。

その「永遠の愛」を手に入れる唯一の方法が、心中という悲劇的な最期だったということです。

ここまで2人が熱情に浮かされたのも、ひとえに両家による絶対的な「禁止」があったからです。

この「禁止」がなければ、この2人の若者の恋は、死に至るほど激しいものにはならず、「青春の1ページ」程度の淡い恋で終わっていた可能性が高いでしょう。

日本だと、「鶴の恩返し」が有名ですよね。

「決して見ないで下さい」と強く念を押されたからこそ、見たくてたまらなくなる、という心理です。

こちらも、もし娘がそう言わなければ、老夫婦は娘の機織に大して興味を持つこともなかったでしょう。

そして、のぞくこともなかったでしょう。

機を織る作業自体は、おばあさんも日常的にやっていて、おじいさんもその姿を普通に見ていて、珍しいものではなかったでしょうからね。

さて、それではこのリアクタンスという心理作用が、ビジネスの希少性とどうつながるのでしょうか。

実は、心理的リアクタンスの根本的な原因は「自由への渇望」です。

「禁止」とは「自由の制限」です。

自我の芽生えた人間は、自分の自由が制限されることには大きな抵抗を覚えます。

自由を束縛されることに我慢がならないのです。

自由が制限されると、その制限を自分の力で解除、または無効化しようという心理が作用します。

これこそが「心理的リアクタンス」の本質なのです。

自我の芽生えた子供の「反抗期」というのも、まさにこの「心理的リアクタンス」が顕著に現れる時期と解することができます。

では、これがビジネスの希少性にどう作用しているのか。

実は、「あと1台」「今日限りで販売停止」の文言は、買い手に対する「自由の大きな制限」になっているのです。

つまり、「今しか買う機会がない」ということです。

もしこれらの文言がなければ、いつでも買える、と思って、あえて今買おうとはしません。

これらの文言が付くことによって、

「自分が買う機会を今日限りに制限された」

と感じます。

その制限を解除する方法は何でしょうか。

店に交渉して、セールスの期限を延ばしてもらうこと、ではありませんよね。

それは、その品物を手元に置くこと、つまり買う、ということです。

買ってしまえば、いつでもその商品にアクセスできる、つまり、その商品に対する自由を手に入れられるわけです。

いわゆる「つん読」も、心理的リアクタンスが密接に関係しています。

本屋で立ち読みするときは、とても面白くて熱心に読み込んでいたのに、いざ買って家に持ち帰ると、ぜんぜん読まなくなった。

そんな経験はないでしょうか。

立ち読みの時は、「今この本屋にいる間しか読めない」という状態でした。

その制限を解除するために買いましたが、家にあっていつでも読める、と思うと、読む気がなくなってしまう。

結果、何年も読まないまま「つん読」になってしまった。

そんな場合は、立ち読みのときの熱心さは、「面白いから」というよりもむしろ、「自由が制限されていたから」だと言えます。

ここでも注目すべきなのは、買い手はその商品の必要性や価値を判断して買っているのではない、ということです。

その商品に対する自由を手に入れようと躍起になっているだけなのです。

必要ないものを自由にできたところで、無意味なはずです。

そのため、いざ家に持ち帰って冷静になると、後悔が襲ってくるわけです。

しかし、悲しいことに、「心理的リアクタンス」によって、私たちは衝動的に、自由への制限を解除したくなってしまうわけです。

まとめ

以上、私たちが希少性に強く反応してしまう2つの原因、

  • 「希少なものは本当に価値がある場合が多い」
  • 「心理的リアクタンス」

があることを見てきました。

簡単に言うと、

「希少=多くの人に求められる=価値が高い」という刷り込みと、

「自由になりにくいものを手元に置いて自由にしたい」という自由への渇望です。

次回は、この希少性のネットビジネスへの応用と、対処法についてです。

ネットビジネスの「期間限定」は必要か~希少性の応用

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